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取り戻せなかったXマスプレゼント…ひき逃げ殺人3年

命がけで取り返そうとした恋人のバッグに入っていたのは、クリスマスプレゼントにと自分のために編みかけていたマフラーだった。

 兵庫県姫路市で2001年12月、車上狙いをした犯人の車を止めようと立ちはだかってひき逃げされ、死亡した大阪府柏原市の会社員、伊藤裕一さん(当時26歳)。母の順子さん(54)は、クリスマスが来ると、よけい切なくなる。事件から3年。犯罪被害者の会に参加し、同じような遺族らのサポートを始めた順子さんは「まだまだ私自身、落ち込む日が多いけど、勇気を振り絞ったあの子に負けないよう生きていこうと思う」と、またこの日に誓う。

 2001年12月14日未明、姫路市内のレストラン駐車場で、食事を終えて恋人の女性(27)と出てきた裕一さんは、女性の車から男がバッグを盗んだのに気づいた。男が別の車で逃げようとしたため、走っていき、両手を広げて止めようとしたが、そのままひかれ、全身打撲で亡くなった。

 バッグには、お金は入っていなかった。女性が編みかけのマフラーが入っていた。結婚を約束して最初のクリスマスイブ。その夜にプレゼントするつもりだった。内証だったから裕一さんは知らなかったはずだ。

 順子さんは、マフラーのことを後で女性から聞かされ、胸が締めつけられる思いだった。逮捕された男の公判では、裕一さんが車にしがみついて拳でたたき続けたため、フロントガラスにひびが入った、と男が供述した。「裕一は、何が入っているかもたぶん知らず、大切な彼女のバッグだからとただ必死で取り戻そうとした。私は、あかんたれって言っていたけど、親が思っていたより何倍も他人思いで強い子だった」

 葬儀後しばらくして、裕一さんの小学生時代の担任が訪ねてきた。小学校の卒業式の日、担任は、みんなが社会人になったら初めての給料から100円を送ってくれ、そのお金で記念の植樹をしようと呼びかけたという。10年がたち、誰もが忘れていたころに100円玉と手紙を郵送してきたのが裕一さんだった。担任は「自分の言葉をこんなにも大事にしてくれて。教師に自信をなくした時はいつもその手紙に励まされてきたんです」と、遺影の前で突っ伏して泣いた。

 裕一さんに奮い起こされるように、順子さんは2002年8月、犯罪被害者の会に加わった。パートの仕事の休みに、同じように事件で息子を亡くした母親の話を聞いたり、駅前でビラを配ったり。「前向きに生きていないと、『くよくよするな』とあの子に言われるような気がして」。その活動は今、自分の支えにもなっている。

 事件で強盗殺人罪に問われた男(33)は1、2審でいずれも求刑通り無期懲役の判決を受けたが、今月中旬、最高裁に上告した。


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